あっという間だった。
あっという間というのは、
おばあちゃんが死ぬまでのことではない。
おばあちゃんとわたしが
一緒にいた時間のことだ。


あれから5日後
おばあちゃんは亡くなった。

ずっと一緒にいた唯一の家族を失った。
悲しいのになぜだか涙は出ない。
 
私は一人では広すぎる部屋で、
なにも考えられずにいた。

こんな日が
いつかやってくることはちゃんと、
実はずっと昔から
分かっていたはずなのに…

わたしは、いつもいつでも
おばあちゃんが死ぬのが怖かった。
たった一人の家族が
いなくなってしまうその日がやってくるのが怖かった。

家の居間は何も変わらない。
ブラウン管の少し小さめのテレビ
部屋の真ん中にあるこたつ
ハンガーに掛ったままの、
おばあちゃんのえんじ色のセーター

この部屋の時間は、
おばあちゃんの死と共に
止まってしまった

ろくにご飯も食べず、
毎日こたつに潜っていた。
気が付けば眠りについていて
また気がつけば目を覚ましていた。