「果穂子、あなたが自分できめた道でしょう。責任を持ちなさい。」
おばあちゃんのその言葉が
何度も私の頭をよぎる
 
一人前の美容師になるまでは帰れない。
 
でも、美容師になったら
秋田に帰って
誰よりも先におばあちゃんの髪を切ってあげよう。


時が経つにつれてだんだんと難しい仕事もこなせるようになった。

「果穂子ちゃん、最近良く動けるようになったし…ハサミの使い方もカラーリングも上手くなったわね。だいぶ成長したと思うわ。」
店長に、そんな嬉しいことを言われたりもした。





やがて、東京で三度目の夏が終わる頃、
美容師試験の合否通知が届いた。

二年分の努力が験される時がきた。

決して自信はなかった
けれど、不思議とわくわくしていた。
私は震える手で封筒を開く。

太字で「合格」という字が目に飛び込んできた。

これでやっと、堂々と
おばあちゃんに会える。