結局、出発するその日まで
おばあちゃんと私のぎこちない関係は続いた。

「行ってきます。」
小さな声でそう言い残し、私は家を出た。

駅のホームに一人で立っている。
本当は恐くて、不安で仕方なかった。


「カホちゃん!」
誰かに呼び止められた。

振り返ると、いつもの駅員さんだった。

「カホちゃん、東京に行くんだって?」

「はい…」

「そうか…また、寂しくなるね」

駅員さんはこうやって、何人の人を送り出して来たんだろう

「これ、おばあちゃんがカホちゃんに渡してって…」
小さなお弁当箱と手紙だった。

いつものあずきゆべしが
お弁当箱いっぱいに入っていた。

『カホちゃんへ。
出発の日まで、冷たくしてしまってごめんね。
一人前の美容師さんになって立派に活躍して下さい。
本当は顔を見てお見送りしたかったんだけど…
これを食べて頑張りなさいね。
おばあちゃんより』



おばあちゃんは、やっぱり誰よりも
わたしの味方でいてくれた。

車窓が涙でにじんだ。