「頭痛と腹痛と吐き気とめまいが…」



椅子に座っている、なじみの背中に声をかける。


保健室の主は、母親と同年代の女の先生。


ちょっとふっくらした年相応の“おばちゃん”で、

明るくて頼りがいがあって生徒に“お母さん”と慕われている。


そんな人。



「また?」



振り返るなり怪訝そうな顔をされた。


いつものこと。


俺は“常連”だから。



「まさか、示し合わせて来たんじゃないでしょうね?」



意味不明なことを呟くと、
くるっと机のほうに向き直ってしまった。


珍しく、仕事かな?


ぼーっと立ち尽くしていると、
おばちゃんは背中を向けたまま、持っていたペンで奥のベッドを指した。


使っていい、って意味だと解釈した俺が、そっちに足を向けると……



「来てるわよ。“彼女”も」



おばちゃんは、ため息まじりに呟いた。