桜の季節になり…





プッ プッ



車のクラクションの音がして、
真っ赤な車が、
歩道を渡ろうする澄香の前に停まった。

思わず足を止める。



「澄香っ」

車の窓が開いて、中から声をかけられた。

「あっ、真由」

「送るよっ、乗って」

「え、いいの?」

「うんっ」

「ありがとっ」


澄香は、
真由の好意に甘えて後部座席に乗った。

助手席に真由。

運転席には、見知らぬ男の人が。


「あっ、すみません。
乗せてもらって」


「なぁにかしこまって」

「え?」

「忘れた?
うちのお兄ちゃんだよ」

「え?、あ、あぁ!
わかんなかったぁ、

お久しぶりです」


「久しぶりっ
元気だった?」

「はいっ」



車は、

眺めの良い並木通りを走ってゆく。



「澄香~」


「ん?」


「今年のバレンタインは、
誰かにチョコあげた?」

「え?あ、…いや」

「あやしい」

「な、なによっ」

「その
ごまつくトコが
らしくない。

あげたな?誰」


「え、えぇ?別にいいじゃんっ誰でも」


「おぉ!!」


兄妹同時に声をあげた。


「なっ!?」

「澄香としては、
認めたコトが進歩だわ」

「え、…そう?

てゆうかっ、あげたって言ってないしっ」


「はいはいっ。

まっ、誰かは聞かないわ、今日は」


「今日はって…」


「私っ、仂哉さんにあげたのっ」

「え!?そうなの!?」

「うん」


「え、

どうやって?」


「疑問に思うでしょ?」

「うん。

だって、真由、
仂哉さんのコト何にも知らないでしょ?
どうやって会えたの?」


「【愛の力】よっ」


「あ、…あぁ」