季節は巡り


新しい年を迎え…迎え
…迎え…


二月



女子達の間では、
バレンタインデーの話題がもちきりで


澄香も

まぁ一応その一人で


― はぁ…どうしよう

渡したことないんだよなぁ… ―


放課後、


理科室で一人、
熱帯魚に餌をやりながら、
ふと
そんなことを思っていると、
不意に
修斗の顔がよぎり、
思わず焦る。


― なっ、
なんで
シュウの顔がよぎるのよ… ―


ガッチャーンっ


「きゃっ!」


水槽のある台の上を拭きながら、
ふと考え事をした拍子に、
台の上にあった花瓶を落として割ってしまった。


「あちゃー…どうしよう」


澄香はしゃがんで、
割れた破片を拾おうした。

「危ないよ!」

「え?」

顔を上げると、

「えっ、」

仂哉が窓から覗き込んでいた。

「な…なんでここに?」

「あ~ぁ~割っちゃってぇー。
その花瓶、俺らがいた前からある物凄い貴重な花瓶なんだよ」

「え、そう、なの?」

「あ~ぁ~」

「どうしよう…」

澄香は、困り果ててしまって、
破片を見つめた。


「しゃあないっ。
よしっ、行くか」

「え、??」

「買いに行こうっ。
連れて行ってやるっ」

「同じものを売ってるトコ、知ってるの!?」

「ほらっ、行くよっ」

「え、…」

「早く!
先生に見つかる前に!」

「あっはいっ」


積極的に言う仂哉に圧される様に、
澄香は慌てて仂哉について学校を出た。