真梨子&淳一夫婦と澄香との
三人での生活は、
年頃の澄香のプライバシーも守られて、
家も広く
澄香の部屋も確保されて、
とても良い距離の保たれた、心地よい家族空間であった。

この家は、
とても広い。

一段高い
ダイニング付き
五十畳のフローリングリビングフロアを囲む様に各部屋がある。

一辺には広々縁庭テラス。

縁庭テラスから通路で続く広々ダンスフロア。
そして、
真梨子&淳一夫婦の部屋、
お手洗い&化粧室&浴室、
澄香の部屋と、
それぞれも広々スペースの部屋が、
真ん中の広いリビングフロアをぐるりと囲む様にある。

そして、
一年、
また一年と良い日々を過ごしてゆく…



そんなある日



いつものように
澄香がリビングに行くと、
ドタドタと物凄い足音とともに、お手洗いへと駆けていく姿を見掛けた。


「真梨子お姉ちゃん?
どうかしたのかな」

澄香は心配に思い、
真梨子の方へといく。
真梨子は、
化粧室の洗面室にいた。
真梨子は、
洗面台で苦しそうに頭をもたげている。
嘔吐でもしている様で、不自然だった。

真梨子の
こんな姿は初めて見る。

「真梨子お姉ちゃん?」

澄香は伺う様に、
そっと声をかけた。

すると、

真梨子は顔を上げて、
直ぐ様タオルで口元を押さえながら
澄香に返事をした。

「ん?」

そして、微笑んでいる。

ついさっきの苦しそうな様子とは
打って変わって。

「どうしたの?澄香ちゃん、そんな顔して」

心配そうにしている澄香に
真梨子は微笑みながら言っている。

逆にどうしたのと聞かれて、
しかも笑顔をしている真梨子に、
澄香は、きょとんとした。

「ん?」

「あ、ううん。
なんだか苦しそうに見えたから、
どうしたのかなと思って…」

「あ、そっか。
ごめんね、大丈夫。
何でもないの」

「そう」

「うん。
心配してくれたのね。
ありがと、澄香ちゃん」

「ううん」


真梨子が何でもないと言うので、
澄香は、気に留めないことにした。