カンナは、
凛とした姿勢を崩さずに
近寄ってくる修斗を
じっと見据えていた。

修斗が、
カンナの前に静かに立ち止まる。


「俺のダチに何か用?」

「私のこと
知ってて言ってるの?
その勇気、褒めるわ」

「カ、カンナっ」

礼司が慌ててカンナを阻止する。

「知らねぇなぁ、あんたなんか。
ただ、
俺の大事な友達に
変なことしないでね、
お嬢ちゃん。

俺は、女だからといって容赦しないからね」

修斗の言葉に
仂哉は同感しながら、
そっとニヒルに微笑む。

「礼司~」

「は、はいっ」

「この女にちゃんと教えてやれよ」

「はいっ…すみません。
…こんなことは、
もうしませんので」

「お前も男ならさ~、
男らしく生きれよ。
喧嘩するなら男同士だろうが。
女いじめてどうする。
あほらしい」

「すみません」


修斗と仂哉が現れる前とは打って変わって、
澄香を囲んでいた礼司をはじめ男子たちは、
頭を下げながら、
大人しく小さくなっていた。

その全然違う光景に、
澄香は、
思わず笑いそうになる。


「澄香」

「っん?」

修斗に急に呼ばれて返事を詰まらせる。

「何びっくりしてんだよ」

「あ、ハハハ…」

「入学おめでとう」

「あっ、
ありがとう」

「何かあったら言えよ。
澄香のためなら
いつでも来てやるからな」

「あ、うん」


修斗は、
皆に知らしめる様に言った。


今まで、
養護施設で育ったことで何か言われたり、いじめられたりしたことがなかったので、
今日のことは予想外で澄香は驚いたが、
予期せぬ修斗の先読みに
澄香は救われた。


これからは…
社会に出たら、
今日みたいなことは、
またあるかもしれない。

澄香は、
修斗に感心しながら
自分に発見と覚悟と
改めて前向きさを思った。