別に、
隠していることではない。
だから、
言われても構わない。

だけど、
さくら園にいたのは幼少の頃で、
それから中学まで、
何事もなく過ごしてきたのに、

今更
こんなふうに言われて、
初めての予期せぬ出来事にどう対処したらいいのかわからず、
澄香は、
嫌な気分になった。


「さくら園?

さくら園って、養護施設だよねぇ」

「あんた、親無しなの?」


「なっ!?」

澄香に、
切なくて、
怒りにも似た衝撃が走った。

と、そのとき、


「何やってんだよ!」

― えっ? ―


聞き覚えのある声に、
澄香は驚く。

振り向くと、

「あ、」


修斗と仂哉が
いた。


わけがわからず、
澄香は佇む。


周りを囲んでいた女子や男子たちは、
一斉に
澄香から離れた。

そして、
修斗と仂哉を見ながら、
酷く驚いた顔で、
後退りした。


「礼司!」

修斗が、
怒り浸透な迫力で名前を呼ぶ。

「は、はいっ」

一番最初に澄香に威圧した男子が、
息をのみ返事をする。

「お前、
誰の許可を得て
この子に話しかけてるんだよ」

唸る様に言う修斗に、
礼司は脅えた。

「す、すみません」

「すみませんじゃねぇよ。
誰の許可を得てって聞いてるんだよ」

「い、いいえ」

「あぁ?」


見たことのない修斗の一面に、
凄味に定着のある風格を感じながら、
澄香は目を丸くして圧倒されていた。


「…カンナが…いや…
修斗さんの知り合いとは知らなくて…すみませんでした…」

「カンナ?
誰だよ」

修斗に聞かれて、
礼司はひとりの女子を見る。

澄香も
その方を見る。

― じっと見てた人だ…カンナっていうんだ ―…


修斗が、
カンナに歩み寄る。