真梨子と淳一に付き添われて、
澄香は、
慶蘭高校へとやってきた。

「わぁ…」

立派な門と校舎を見上げて、
澄香は、歓喜する。


「澄香ちゃん、
本当におめでとう」

「有難う。
真梨子お姉ちゃん」


「おめでとう」

「有難う。
淳一お兄さん」


「では、
入りましょう」

「はい」


澄香は、目を輝かせ、
これから始まる
高校生活の希望を胸に、
門をくぐった。




初めて入る校舎に入り、
一旦真梨子たちと分かれて、
澄香は、
生徒の席につく。


すると、
なんとなく
誰かの視線を感じた。

澄香は、
徐に
その方を見ると、

一人の女子が、
じっと
澄香を見つめていた。

― …何…だろう ―…

入学式の席に座る女子。

同級生であろう
しかし、
見知らぬ女子の自分を見つめる視線に、
澄香は、
不思議に思いながら
さりげなく視線をよそへと移して、
気に留めないことにした。




入学式は無事に終わり、
澄香は、校舎を出る。

すると、

「ねぇ」

と、
背後から声がしたので、
澄香は振り向いた。


「あ、」

見ると、
さっき
じっと自分を見ていた女子がいた。

またも、
じっと澄香を見つめている。

さすがに
澄香は妙に思った。

「何?」


すると、
彼女の後ろから
何人もの男子が集まってきて、
澄香を囲んだ。

「何なの?」

澄香は不気味に思いながら、彼女と彼等を見た。

彼等は、
澄香の顔を覗き込む。

「へぇーホントだぁ。
見たことない顔だ」

「俺も。
新顔だねぇ」

「あんた、どこ中?
新入り?
どこの人?」

「え?」

澄香は後ずさる。

「どこの人~?
どっから来たの~?」

「私が答えてあげるわよ」

澄香を囲みながらふざけた様に質問する彼等を見ながら、
黙ってじっと見ていた
さっきの女子が口を開いた。

「さくら園」

― え…何なの?… ―

澄香に、
初めての胸騒ぎがよぎる。