葬儀には、
沢山の方々がお見えになった。

澄香が育ったさくら園の先生たちも

そして、
著名な方も


お母さんの交友が伺い知れ、
愛され親しまれていたことがよくわかる葬儀だった。




夜は更けて


来賓の方々は帰られて、

澄香は、
静まり返る縁側で
ひとり
月を見上げる…



「澄香ちゃん」

来賓を見送り、
片付けを一段落させた真梨子は、
そっと声をかけた。

澄香は、
静かに振り返る。


「真梨子お姉ちゃん」

真梨子は、
真っ赤に腫れた目を細めて、
小さく微笑んだ。

大泣きしたことを察する…


真梨子は、
小さく言った。


「澄香ちゃん…

私と一緒に暮らさない?」

「え…」

「淳一さんもいるけど…
澄香ちゃんが、
嫌じゃないなら、
一緒に暮らさないかな…と思ってね」


澄香は、

お母さんと過ごした日々を思い出していた。


数えきれないほどの思い出が、
ひとつずつ
場面となって浮かぶ。

浮かんでは消え

また浮かんで…


計り知れない思い出は、
澄香の涙に変わった…

そして、

どんどん流れて
落ちてゆく…


「まだ…

やってないもん…

お母さんの誕生日

パリのレストランも

連れていってあげるって、
約束したもん…

まだ…行ってない…

それから…」


計り知れない悲しみが、
今頃になって、
澄香を襲った。

真梨子も
こんな想いをしたことをともに知り、
澄香は、
悲しくて
悲しくて…

こんなにも
辛い想い…

人は、
こんなにも悲しくなることを味わい…
初めて知った。


真梨子は、
澄香を抱きしめる。


「澄香ちゃん

一緒に暮らそう。

澄香ちゃんを一人に出来ないの。私が心配なの。

これからは姉妹で
助け合って、
一緒に生きよう」


真梨子の言葉に

澄香は、

そっと頷いた。