七月三十日



「スミちゃんっ」

「なぁに?お母さん」

「スミちゃんの好きな歌手が出てるわよ」

お母さんが、
お風呂からあがった澄香に声をかける。


澄香が、何気なく時計を見ると、
夜十時を過ぎていた。

早寝早起きが、
我が家のルール。


「見たいけど…」


「見なさいよ」


「え?」


「夏休みだから、特別」


そう言って、
お母さんは微笑んだ。


別に
厳しい母親ではない。

お母さんは、
怒ることを知らないんじゃないかと思うほどの
ゆとりのある優しい人。

ただ、
早寝早起きや
時間には、
澄香は、きちんと教えられて育った。

だから、
澄香には、
時間に几帳面な癖がついている。


でも、
今日は特別にということで、
澄香は、
お母さんの言葉に甘えて好きな歌手の歌を楽しんだ。


――――――…



「あぁ~、楽しかったぁ」

「良かったね」

「うん。
ありがと、お母さん。

じゃあ、寝ます」


「はい」


「おやすみなさい」


「おやすみ」



澄香は、
余韻を胸に自分の部屋へと上がり、

心地よい眠りについた。