修斗は、
ベッドに仰向けになる。
そして、
徐に口を開いた。


「澄香…、

自分の本当の親の話、
一度もしないんだ」


仂哉は、見ている雑誌から
修斗へと視線を向ける。


「澄香が小さいときも、そう。

一度も聞いたことがなかった。

幼いときなんか、
親元恋しくて当たり前なのに、
泣き言も言わなかった。

俺らにしてみたら、
親がいるって当たり前じゃん。

でも、

澄香は、
物心ついたときには、
もうすでに両親はいなくてさ…」


「…生きてるの?」


「亡くなったんだって…」


「そう…」


仂哉は、
静かに視線を落とす。


「両親のこと内に秘めて、泣き言言わなくて、余りしゃべらなくて大人しかったけど、
養護施設で
前向きに生きてた。

そして、今、
新しい家族が出来て、
幸せに思いながら生きてる。

自分の運命を
幼いうちから
自分で納得して…

澄香……偉いなぁって思ってさ」


「そうだな」


「俺さ…

そんな
頑張り屋の澄香見てたら、
応援したくなるんだよね。

何か出来ることはないかって…

守ってやりたいって、
思うよ…」


「そうか」


天井を仰ぐ修斗を、

仂哉は、
静かに見つめていた。