澄香は、小学生になった。


そして、
月日は流れ

澄香は、
里親となった峰子や
峰子の娘,真梨子に見守られ、
愛されて、

出会ったときの真梨子の手のぬくもり、

峰子との気持ちの繋がりと
峰子から教わった愛あふれる『家族』というものを胸に、
二人からの
愛情をいっぱいに受けて育っていた。



小学校四年生のある日。


真梨子からのプレゼントのランドセルをからって歩く
学校からの帰り道で、

澄香は、

とある人を見掛けた。


「あ…」


本屋で立ち読みをしている、中学校の制服を着た少年が一人。


澄香は、
何気なく近付いて、
そっと
少年の腕をつついた。

「ん?」


つつかれて少年は、
澄香に視線を落とす。

そして、
不思議そうな顔をした。

― やっぱり修斗お兄ちゃんだったぁ ―

澄香は、
心の中で呟く。


澄香がさくら園にいた時に出会った、
碇 修斗お兄ちゃん。


どうやら、
修斗は、
誰だかわからない様子なので、
澄香は、
そっと微笑んでみた。

すると…


「あぁ!澄香!?」

「うん」

「こんな所で会うなんて!澄香!元気だったか」

「うん」

「そっかぁ~良かった!
あれから見なくなったから、心配して園長先生に聞いたんだ。
そしたら、
澄香に家族ができたって言ったから」

「うんっ」

澄香は、満面に微笑んだ。

その表情で、
幸せなんだなと
修斗は、理解した。


「そっかぁ。
良かったなぁ」


修斗は、
しみじみと言った。


「家、この辺か?」


「うん」


澄香は頷いて、
家への道を指さした。

「そうか。
俺の家、この本屋の裏なんだ」

「へぇ…近い…」


うん しか言わなかった澄香の
久々に聞いた うん 以外の言葉。

そして、澄香の表情に、
修斗は、
新しい家での澄香の成長を感じた。


「澄香、
良かったなぁ」


修斗は、
噛み締める様に、
もう一度 言った…