さくら園から
車で二十分…



富士崎家に到着し、
澄香は、
静かに車を降りる。



重厚な門構えに
松や桜の植木のある
大きな和風のお家。


澄香は、
初めて見るその家のひとつひとつを
ゆっくりと見渡していた。


そんな澄香に
おばあちゃんは歩み寄る。


「澄香ちゃん、
あなたのお家よ」


優しく言葉をかける
おばあちゃんに、
澄香は、
安心感を覚えて、
小さく返事をする。


「はい」


おばあちゃんは、
澄香を見つめて
微笑んで頷く。


「さぁさぁ
入りましょう」


おばあちゃんに手を引かれて家の門をくぐると、


「富士崎家へようこそ!」


と、大きな声が聞こえた。


不意に驚いて
声の方を見る。


「澄香ちゃーん、
お母さーん、
おかえりなさーい」


年上のお姉さんが、
此方に向かって
満面の笑顔で手を振っている。

緩いウェーブのかかったブラウン色の長い髪をした、色白で
とても可愛らしいお姉さん。

周りには、
パッと花が咲いた様な、
華やかなオーラの雰囲気を持つ
素敵なお姉さんだった。