他の客はヒソヒソと、こちらを窺い見ながら話しているけれど。
しっとりとしたジャズの音が流れる空間は、すぐに私の心を落ち着かせてくれる。
本気で、この世の勘違い男は消滅しろ――…
「…伽耶、またか――」
呆れているクセに、ジャズとピタリと合う声色は今日も色気を纏ってて。
「あれ、褒めてくれないの?」
液体を消化して空となったグラスを、コトンと置けばカウンター越しの声主を捉える。
「まったく…」
「…ありがと」
そうしてタイミング良く差し出されたモノは、新たな琥珀色の液体が透き通っていて。
クスッと笑って手にすれば、芳醇な香りを味わうようにゆっくりとソレを傾けた。

