「は、なして…」
「離さない――」
眼前の胸をグイグイ押そうとしても、その度にギュッと苦しいほど引き寄せられて。
武田さんの胸の中では泣きたくないのに、生理的な涙は止まらない。
やっぱり私は、イイ女なんてなりきれないよ…――
「いい加減に、離して貰えますか?」
「・・・っ」
するとカウンター越しに響いた落ち着いた声色に、ビクッと肩を揺らす私。
「…まさかマスターに邪魔されるとはね」
武田さんは苦笑すると、ゆっくり私の両肩を持って離してくれる。
「・・・」
改めて正面へ向き直った私は俯いたまま、煌ちゃんの目を見られず。
テーブルに視線を落としていると、無言でコトリと置かれたグラスに目を丸くした。

