貴方で酔わせて。-オトナの事情-



そうして、武田さんについて行った私が悪いとは思う。


だけど先方はあくまで、お客様の立場だから強くは言えない。




「あの、どうしてココなんですか…?」


それでも見慣れた外観を前にして、足が止まったのは仕方ないでしょ…?


するとドアへ手を掛けようていた彼が、こちらへ振り返った。



「昨日のリベンジしたいから」


「・・・ッ」


“リベンジ”なんて恐ろしいフレーズに、思わずビクッと肩を揺らすと。



「伽耶ちゃん、何してんの?」


そんな私を気にする事なく、間接照明とモダンなジャズの流れる空間に入室してしまう。



このまま引き返して、逃げてしまいたいのは山々だし。


今日は木曜で、オマケに仕事を持ち込みたくない場所なのに…。


それでも、私が逃げられないでいるのは。



いつしか身についてた、社会人としてのプライドだろう――



上手く動かない足を前進させれば、パンプスのヒール音がコツコツと響いた…。