そろそろグラスのカルバドスが無くなる頃合いだったのに。
新たなグラスを寄越さなかった時点で、ソレはもう帰れという意味合いで。
オマケにグラスに浮かぶ氷さえ溶け、カルバドスの香りも薄れていたから。
結局アーモンド入りのチョコに浸れず、一粒を食べたのみ。
そんなチョコは、もう用無しらしい今の私とリンクする――
「キョウくん…会計お願い出来る?」
お客に背をを向けてグラスを洗っていた、新米バーテンくんに声を掛けた。
「伽耶さん、もう帰るんすか?」
手を止めてこちらへ向き直ってくれた、キョウくんとはもう顔見知りで。
「うん、明日は結構遅くなるだろうし…。
今日もありがと、またね」
唯一私たちの関係を知る彼に笑い、サッとお札を出し会計を済ませると。
滅多に向けては貰えない笑顔に背を向け、静かにバーをあとにした。

