これが仕事なんだし、まったく問題ナイナイ。
ほら、見ない・聞かない・気づかないフリだ――
今の状況下で逃げられるモノといえば、やはり目の前に置かれたお酒で。
意識を寸断するように、じんわりと汗を掻き始めたグラス内のカルバドスをグイッと煽った。
ココへ来る度に同じ事を繰り返す私こと、伏見 伽耶(フシミカヤ)。
丸の内に本社を置くIT企業に勤める、OL歴3年を過ぎた25歳。
残業の重なる部署に配属されていて、此処へ来れるのは週に2回。
…ていうより、私って立派なお客さんなのに。
煌ちゃんからの命令で、水曜と金曜しか入店を許して貰えないでいるのだ。
“ねぇ、今日のカクテルの意味は…?”
“佐和さんが認められた日にちなんで”
“もぉ…このリップサービスにヤラれるのよねぇ”
“佐和さんの色気には俺もヤラれてますけど”
“へぇ、一度試してみる?”
「・・・っ」
幾ら平静を装ってみても、時折呼ばれる“煌くん”の名がヤケに強調されて聞こえた。
オマケに最後のフレーズは、どう差し引きしても本気が窺えるんですけど…!

