シンと静まり返った室内は、何となく居心地が悪い…。
「斉藤さん、仕事はどう?」
何故か陳腐な言い訳を考えつつ、そう話し掛ければ。
「はい、楽しいです」
「…楽しい?」
彼女からの予想外の返事に、思わず疑問符で返した俺。
すると手を止めて、大きな瞳でこちらをジッと見つめてくる斉藤さん。
「えと、既にバレバレだと思いますけど…――
毎日失敗ばかりして、周りに迷惑ばかり掛けて…、本当に自分が嫌だなって思うんです。
でも…経理部の雰囲気が好きで、毎日笑える職場にいられて楽しいなって…」
発言の真意を見抜くのは、その人の目を見れば分かるからこそ。
青天の霹靂(へきれき)とは、まさにこの事――
「そうか…」
言葉少ない俺に対してニコッと笑うと、その手を再び動かし始めた。

