泣かないけど。 拗ねたりなんかしないけど。 ただ胸が苦しくて、何かを吐き出したい気持ちになった。 もっと早くに誠くんの正体を知っていればよかった。 遅い。 何もかもがもう遅い。 好きの気持ちは消えてなんかくれなかった。 消えるどころか、来たときよりも好きになっている気がした。 そんな自分が悲しい。 そんな自分に腹が立つ。 冴子の待つ教室へと向かう廊下がやけに冷たく感じた。