「あっ、奈々ちゃん」 誠くんはまずあたしの名前を呼んだ。 それだけで女子たちの鋭い視線があたしに向けられる。 下手に何かを言うと面倒なことが起こりかねないと思ったあたしは、ただ黙って作り笑顔を顔に貼り付けたまま決められた言葉のみを口にする。 「ご注文をお伺い致します」 再度その言葉を言う。 何にも反応しないあたしに、誠くんは小さく笑うと料理名を言っていった。 早くここからいなくなりたい。 早くここから立ち去りたい。 注文を訊くだけなのに、物凄く長い時間に感じた。