家につくころには雨はだいぶ弱まっていた。

「本当に助かったよ、ありがとう。」
と改めて言われた。少し照れくさくて僕は葉っぱをじっと見た。役に立てて本当によかった。

「いけない、もうすぐバスの時間だ。」
と王子が言った。



***
 
 バス停で王子とバスを待った。
「この傘、ほんとに素敵だね。」
とまた感謝された。

 僕は自分の意見を言うのが苦手で、だけど今回思い切って言ってみてよかったことを伝えた。王子は少し考えて
「言葉にするのは怖いよね、だけど大切なことだよね」
とまっすぐ前を見て言った。王子が急に大人っぽいことを言うから少しびっくりした。
だけど、その通りだと思う。

 またね、と言い合い僕はバスに乗り込んだ。

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 志木駅に着くと地面が濡れていた。こっちも雨が降っていたようだ。王子とおじいさんに言われた‘ありがとう’を思い出した。