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 バスは一週間前と同じように、細い田舎道で停まった。
このあいだと違うのは“ここ”が昼間だったということ。

これはどういうことなんだろう。上を見れば太陽が昇っている。横を向けば綺麗な黄金色が一面に広がっていた。このあいだは暗くて見えなかったけど、道の横は田んぼだったんだ。

稲穂は風が吹くたびにゆらゆらと揺れている。僕は深く深呼吸した。

「綺麗な色だよね。僕にもこんな色の友達がいるんだ」
びっくりして声のした方を向くと王子が立っていた。あ、会えた…!

「今日は天気が良いから日向ぼっこしよう。」
それだけ言って王子は歩きだしたので、その後についてまたあの家に向った。
ただいまー、と大きな声で言いながら王子は家の中に入っていく。
「お邪魔します。」
と、小さく言って後に続いた。

中に入るとおばあさんが縁側に座っていた。王子は当たり前のように居間を通りすぎ、縁側にごろんと横になった。

ぼくが戸惑っていると
「へりへり」
とおばあさんが僕に向かって言った。
「へり‥?」
首を傾げるとおばあさんはにっこり笑ってもう一度、へりへりと言いながら手招きをした。

手招きされたので、とりあえず縁側に座ってみた。おばあさんは頷いてまた笑って、
「まんまくうか?」
と言った。ま…まんま…?
「まんまだよ、まんま!食べる?」
今度は王子が言った。何のことだろう、どうしよう。
「まんまはご飯のことだよ。ご飯食べるか、っておばあさんが聞いてるよ。」
困っていたら王子が教えてくれた。お腹はすいていないので丁寧に断った。
「んだば、おちゃっこのむか。」
と言うと、おばあさんは台所へ向かい、お茶を持ってきてくれた。お茶のことか。
「がっこもくってけり」
と言って、お漬物を出された。
「がっこはお漬物だよ。方言、おもしろいよね。」
と王子は笑った。

よくわからない方言もおもしろいし、王子が方言をマスターしているのもおもしろい。お茶とお漬物がセットで出てくるのもなんだかおもしろくて笑った。


太陽がいい感じに気持ちいいし、お茶もお漬物も美味しい。何よりおばあさんの方言が温かい。居心地がよくて僕も縁側に寝転んだ。