バスは一本道で停車した。
ここはどこだろう。これは夢なのか?

混乱している僕を気にもとめず、王子はずかずかと道を進み、ある家に入って行った。僕も慌てて後を追った。



家にはおじいさんとおばあさんがいて、王子が夕飯をご馳走してほしいと頼んだ。

「ああ、この人は今日知り合った、えーと…」
「和男です。」
「和男だよ。和男、こちらはおじいさんとおばあさんだよ。よろしくね。」

それだけ話すと、おばあさんが夕飯の支度を始めた。王子が手伝いをしているので、僕もおにぎりをむすぶのを手伝った。
僕の作ったおにぎりは、不格好ですぐに倒れてしまう…。
 おばあさんはゆっくり、だけどてきぱきと準備をし、王子も手慣れた様子で手伝いをした。



 完成した料理に、僕は感動した。
 一品一品はシンプルだけど、こんなにたくさんの料理が並んでいるのは久しぶりだ。

「いただきます。」
とみんなで言って、料理をぱくぱく食べた。
 特に会話はない。だけどそれが不思議と居心地がよかった。
 
 楽しい。誰かと食卓を囲むのは久しぶりだ。食事の前より、なんだかみんなをずっと近くに感じる。


「あーお腹いっぱい。」
満足そうに息をつき、王子は言った。

 また一緒に食べようね、と王子が笑うので、僕も笑って頷いた。おじいさんもおばあさんも笑っている。こんなふうに笑ってもらえるなら、また慣れないおにぎりを作るのもいいかもしれない。