本当にきれいな村だなぁ。だけど、自然にあふれている景色の中に電柱がたっているのには少し違和感を持った。夢のようなこの村にも電柱が必要なんだよな。

すると、
「この村で電柱が一番かっこいいと思う。」
と王子が言った。
「かっこいい?」
「うん。和男が住んでいる街だったら、電柱は目立たないでしょ?とっても必要だし、村と村を繋いでいたりするのに。でもここでみる電柱は目立ってて、かっこいいよ。」
もう一度電柱を見た。

「良いと思えないものも、ちょっと見方を変えればかっこよく見えるんだよ。」
また王子は大人っぽいことを言った。

少し考えて、僕はずっと感じていたことを言った。
「僕はこの村に来るまで、普通で目立たない人間で…。いや、今も都会で過ごす僕は目立たない、大勢の中のひとりなんだ。」

王子は黙って聞いている。
「僕が初めてこの村に来た時、僕はこの町にふさわしくないというか、自分が浮いている感じがして。でもここに来るたび、王子とおじいさん、おばあさんと一緒にいるのが楽しくて。この前、僕の意見が役に立って、“ありがとう”って言ってもらえて、本当に嬉しかった。
僕はなんとなくこの村で浮いている、違和感みたいなものがあって、ちょっと寂しいと思ってた。僕は電柱みたいに、この村で浮いた存在かもしれない。
だけど、僕はここで自分の存在をはっきり感じるんだ…。」

なんだかべらべらと喋ってしまい、少し不安になった。
だけど、王子はにっこり笑って聞いてくれた。


― そうだ。この村で僕は自分の存在を感じられる。
自分について考えることができる、前向きに。

***
志木に戻って、電柱を見た。
同じ電柱…
この電柱も王子のいる村に繋がっているのかな。