「とりあえず手洗え。入念に洗えよ」


「はーい…」


棗くんによると、あれは”使用済み”のものらしい。

何に使ったか分からないけど、とにかく触っちゃいけないって怒られちゃった…


洗面所で、鼻歌交じりに手を洗っていると、棗くんが入ってきた。


「おい、理衣奈。水洗いじゃねーよな?」


「ギクッ…」


「ギクッってなんだよギクッって。ちゃんと石鹸使えよ」


「はーい…」


石鹸が入っているボトルのポンプを押す。

が、出てこない。


何回も何回も押すが出てこない。


「マジかよ…」


「マジですね」


「じゃ、ボディソープ使え」


「…はーい」


今度はシャワールームに入り、ボディソープが入っているボドルのポンプを押す。


次は出た。でも少しだけ。


これじゃあ、洗えないよー…


「…なんなんだよこのホテル」


「後からロビーの人に言っとかなきゃね」


とりあえず、許してくれた(?)みたいなので、洗面所から出る。