途中、棗くんがいたので、小走りで棗くんを追い越した。
優越感を抱きながら、フフンと鼻で笑った。


「何笑ってんだよ。おっ、俺が1ばーん」


「…へ?」


最後の最後で棗くんに抜かされてしまった。

あぁ、こんなことになるならさっさと教室に入ればよかった…!


「ちょっと!私が先に入るの!」


「はぁ?てか、俺もう入ってるし」


「…そういうの負け犬の遠吠えっていうんだよ?知ってた?」


”負け犬の遠吠え”なんて人生で初めて使ったかもしれない。
なんか得した気分!
…意味はよく分かんないけど。


「…は?それお前だろ」


「……あの…」


「「何?」」


って、ハッ!

そうじゃん、ここ教室じゃん!


それに棗くんとハモっちゃったし…


声をかけてきたのはクラスの委員長(らしい)。
私が寝てる間に勝手に決まってたみたい。


気がつけば皆の注目の的。

棗くんは注目されることに慣れているのか、そっぽを向いている。


は、は、恥ずかしい……


俯きながら早歩きで自分の席へ向かった。