長い廊下を歩く


先輩が少し先を歩いて、私がその後ろをついていく



前に見た池の周りには花が咲いていた



鯉も相変わらず呑気に泳いでいる



鹿威しが鳴る




先輩は何も話さなかったけれど、息苦しくはなかった




先輩の部屋は相変わらず綺麗だった



分厚かった絨毯も、今は薄いものに変わっていた



椅子に座り、鞄から紙袋を取り出した



「いつもお世話になってるので、お礼です」



紙袋を見た瞬間に先輩はびっくりしていた



「この店、初めてのお客さんには無愛想でしょ?大丈夫だった?」



首を少し傾げながら心配そうに先輩は言った



「色々ありましたけど…先輩の為に頑張ってきました」



少し笑いながら言うと、先輩は悲し気な顔をした



「ごめんね、わざわざ。俺だって迷惑かけたりしてるのに、お金使わせて嫌な思いまでさせて…」



「いえいえ、中、見てみて下さい」



変な空気を壊すためにも、そう言った