ディグ系に殴られるスレイヴ人を。

重いため息をしてまた眉間にシワを寄せた。


(いい加減慣れてよ自分……)


ブローバに固い棒で全身を殴られていた黒人。

殴られていた黒人は酷く痩せ細っていて、きっと殴られた場所は内出血か折れているだろう。


一見、ひどく見えるが、ブローバさんは全くといっていいほどいい人だ。

それは、ディグ系に対してのことであるが。



「はあ……」



この国、街に来て1年。

差別化は、あたしが生まれる前から始まっているが、ここ19年生きてきて慣れる気配は全くと言っていいほどない。



「ヒナギー、ヒナギー、」



カタコトで名前を呼ばれた。

声は、ドアの向こう側からだった。



「…ああ、おはようベニー」

「おはようヒナギ。さぁ、今日の朝ご飯はトーストだよ。好きにトッピングして食べちゃいな」

「うん、……ありがとう」



日焼けで黒くなった肌を見せながら、日本語で言う寮母、ベニーが朝食を持ってやってきた。

こんがりと焼けたトーストの匂いが食欲をそそる。



「じゃあ、30分後に取りに来るからね」

「うん。分かった、じゃあねベニー」



パタン、とドアを閉めて小洒落たトレーをダイニングテーブルに置いた。

冷蔵庫から牛乳を取り出す。