『神崎一族』の朝は忙しい。



まだ陽が明ける前に各部隊が決められた場所を見回りして、1時間ほど基礎訓練を終えた後、ようやく学校へ向かうことになっている。



「うぉっ!!」



今日も何処かから悲鳴が聞こえる。



無駄に広い訓練場に響く、心地いいテノールの声。



「火原隊長っ!!」



人の名前を大声で呼びながら、両手に腰を当ててやってくる彼の声。



「何するんですかっ!」



私を見下ろす、目の前の爽やかお兄さんに向かって小さく微笑んだ。




「何って、訓練だけど?」



「今のは訓練ってレベルじゃなかったっすよ!!」



そう言って、さっきまで自分の立っていた場所を指差した。




「見てください、アレ!」



「ん、何?」



「俺がさっきまでいた所、無残な光景になってるじゃないっすか!!」



「だから?」



だからって…と口を開きかけた青年は、私の顔を見て、思わず息をのんだ。







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