「昴!よけなさいっ!!」
その声と同時に、彼の体を突き飛ばした瞬間、横腹に鈍い痛みが広がっていくのが分かった。
霞む視界で、ゆっくりと顔を上げると、そこには木の上に座った、1人の男が、私達を見下ろしている。
「へぇ…俺の殺気に気づくなんてなぁ。流石に神崎一族は、一筋縄ではいかねぇか。」
くくくっ、と楽しげに笑うその男を睨みつけながら、壁を使って、震える足で立ち上がる。
「……昴、逃げなさい。」
「なっ、何言ってるんですか!そんな大怪我している隊長を置いて逃げるなんて…」
「目の前の敵をよく見定めなさい!今までの相手とは格が違うわっ!!」
貴方がいたら足手まといなのよ!と、昴の顔を見ることなく、喉が張り裂けそうなくらいの、大声で叫んだ。
「……昴は本家に戻って、他の守護者達を呼んできて。」
「……っでも!」
「急いで!!」
絞り出したように必ず連れてきます!と言った昴のその声を最後に、彼は背を向けて走り出す。
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