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「今日は、特に怪しい気配を感じませんねー…。」



真っ暗な闇の中に、あくび混じりの昴の声が響きわたった。



こうして私達2人が並んで歩いている姿は、一般人からして見れば、恋人同士に見えるのだろうか。



まぁ、お兄さん感覚で一緒にいる昴と、恋人になることはあり得ないけれど。



それに、私と昴は年どころか、立場さえも違うし……



ちらりと、隣で眠そうな顔をしている昴を見つめながら、頭の片隅で考えて、「あぁ、でも」と静かに瞳を見開く。



「それなら、奏也様とも、違う世界の人間ってことか……」



思わず口に出してしまった声が、昴に気づかれていないか心配になったけれど、どうやら気づかれていないらしい。



ふわぁ、と大きなあくびをこぼしている昴に、心の中で安易の溜め息をつきながら、真っ暗な空を見つめた。



もうすぐ真ん中に辿り着こうとしている青白い月は、何だか怪しげな光を発していて。



その不気味さに背筋を震わせた瞬間、優妃はカッと目を見開いた。






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