きっと貴方は、いつの間にか、私の手が届かないところにまで行ってしまうのだろうけれど――…
「さっきから、鬱陶しいなぁ。」
ザァッと強い風が木々の間を強く吹き抜けて、桃色の花びらを地面に落とす。
その風の先で、漆黒の長い髪を靡かせている1人の少女。
「コソコソ隠れてないで、さっさと出てきなさいよ。」
胸元にぶら下がる赤いリボンを外しながら、溜め息混じりの声をこぼすと、ゆっくりと後ろを振り返った。
「……ねぇ、化け物?」
挑発するような笑みを浮かべて、その影に向かって問いかけると、“ソレ”は静かに正体を現した。
人間とは違う、醜い姿をした生き物は、獣のような呻き声を上げて、こちらへ向かってくる。
「………はぁ、面倒くさいなぁ――でも、」
そっちの方が、私にしてみれば好都合なんだけど。
襲いかかってくる“ソレ”を目に焼き付けて、一度、瞳を閉じた瞬間、笑みを浮かべていた顔を無表情へと変えた。
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