「『氷月』が存在するとき、その世界は繋がれる。」
研ぎ澄まされた刃のような冷たい瞳。
"氷月"と言う単語が耳に届いた瞬間、背中の刻印がずくり、と疼いた。
「そして、この頃急激に増えてきた悪魔の数と今日の悪魔の伝言……。」
思い出したように呟いた後、愁也様はそっと口を開けた。
「氷月が、覚醒したのかも知れない。」
ザワリと殺気出す部屋の中。
誰ひとりとして口を開かない空間に、聞き慣れた声が響いた。
「ですが一つ前の覚醒では、それを食い止められたのでしょう?」
奏也様の言葉に、愁也様がとてもつらそうに顔を歪める。
その表情が私に向けられたのが分かって、それから逃げるように顔をそらした。
「……前にも話したと思うが、お前達は聖戦の度に何度も転生している。」
記憶はないだろうけどね、と言った愁也様の声は震えていた。
「だけど一つ前の聖戦で、世界の全てが終わろうとした時だ。」
ぐっと拳を握りしめて瞳を怒りに染めた当主に、私はそっと瞳を伏せた。
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