「何してんだよ、俺が来てなかったら大怪我してたぞ。」
「瑛太なんかに助けてもらわなくたって、自分で対処できたわ。」
木に寄りかかって怪しげな笑みを浮かべる人物に声をかけると、瑛太(エイタ)と呼ばれた少年は、静かに私の方へと足を踏み出した。
「頬、血が出てる。」
「……そう。」
「らしくないな、相手は格下の悪魔だぞ?」
ツーと流れる一筋の赤い液体の場所を教えるように、瑛太が自分の右頬を指差す。
それに眉をしかめて強い力で拭ってみれば、彼は小さく笑みをこぼして、ゆっくりと頬から指を放した。
「どうして此処が分かったの?」
「三階から優妃が走ってくの見えたし。」
結界貼ったの分かったから、と興味なさそうに話す瑛太に「そっか、」と納得したように頷いた。
「それにしても、おかしくないか?」
「私にも何がなんだか……女神の守護を受けてるこの学園に、中級悪魔が入れるわけがないし。」
それに……と言葉を濁して、真剣な表情で瑛太を見つめる。
「あの話、貴方も聞いたんでしょ?」
「まぁな…、所々だけど。」
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