私は感情を持ってない
ただのイレモノ
ココロがないから
ただのガラクタにすぎない
私が“人間”じゃなくなったのは
確か、小学生の時だった。
ほんのり暖かさがやってきた4月の半ば
『優美ちゃん!』
仲のいい女友達と教室の中で折り紙の鶴を折る練習をしていた時だった。
担任の若い女の先生が蒼白な顔をして私の名前を呼んだんだ。
『せんせ…?』
一度、先生を呼んだのは覚えてる
でも、気付けば病院にいた。
つい最近まで体中に細長いチューブがついてたお母さんが
今は優しい顔をして
チューブも何もつけずに眠っていた。
『お母さん、退院するの?』
お母さんの傍で押し黙っていたお父さんの手を握り
何度も揺さ振った
だけど、お父さんは何も答えなかった。
ただ、お父さんの肩が震えていた
それが何を意味するかなんて
まだあの頃の私にはわからなかった。

