意地悪なヒト








しばらく沈黙がつづいた。







いつもうるさい梶原くんが
じっと、空を見上げている







何をそんなに見ているの?






気になるはずもないのに
そう感じてしまった自分がいた。













なんだか、私……変だ。






そうこうしているうちに
予鈴が静かな音楽室に響いた。








「それでは、失礼します。」




梶原くんにそう告げると私は音楽室のドアノブを掴んだ。








「待って」







静かな音楽室によく響く声





低くていつになく真剣な声色に
私は振り返った







「はい?」







そう短く返事をすると
梶原くんがゆっくり口を開いた。






「さっき…教室出ていく時…何かあった?」








え?






真剣な眼差しが私を捕らえた






「何、言ってるの?」







パッと目を反らして私は小さく言った。







「いいんちょ、“いつも”と違って様子変だったから」






「別に何もありませんでしたよ?」





「本当に?」





「本当に」







私はそれだけ返すと
音楽室を素早く去った。











複雑だった





ただそれだけ。








気付いてほしくなかった









私も認めたくなかったのに







梶原くんは私のことを
なんでも見透かすように
言い放つ







溺れてしまいそうなのが



目に見えていて怖いんだ。