「何もないなら、いいけど…」
ボソっと呟いた梶原くん
私は背筋をぴんと伸ばして
音楽室に背を向けた。
この場所も当分来ないでおこう。
そう思いながら、教室に向かった。
「いーんちょー、腹減らなーい?」
私の少し後ろを歩く梶原くんが言った。
「昼食なら摂りましたから」
振り返りもせず答えると
梶原くんは ちぇー… と言った。
サボりの口実を学級委員に押しつけても無駄でしょう
梶原くんはいまいちわかっていない。
「いーんちょー、頭痛ーい!」
「保健室に行ったらどうですか?」
アドバイスだけを言い放ち
そのまま姿勢を保って歩く私
「一人で行くのはいやなのー」
「それなら、保健委員の鈴木くんに頼んでください」
スタスタと歩く私と、後ろをゆっくり歩く梶原くん
本当に奇妙な光景だ…。

