地味男子

「潤君……。」


 まだ不機嫌そうな顔がこっちを見る。



 どうしてそんな顔するの?



 あたしのこと嫌いになっちゃった……?




「あのね…」


 震える手でお弁当をさし出す。



 あたしのこと嫌いだから受け取ってくれないの?



 なかなか伸びてこない潤君の大きな手に不安がどんどんと募って行く。




「柴乃ちゃん? それ、俺の弁当?」


 横から蒼井が話しかけてくる。



 あたしは蒼井の方には一切目を向けず、じっと潤君にお弁当をさし出す。



「潤……君…ッ…」


 ワンサイズ大きいセーターにぽたぽたと落ちてきた涙。



 潤君に泣いてる所なんて見られたくないよ。