地味男子

 人気のない場所に来てやっと出た声は涙声でかすれていた。


「離してっ!!」

 バッと振り払った腕をつかんでいる手。


 潤君に勘違いされたかもしれないじゃない!!



「どうしてこんなことするのよ!!」


 あんまり憎いという感情はないあたしでも少し蒼井を憎んだ。



 ぼろぼろとあたしの目から落ちる涙は嫌なものでしかなかった。


「どうしてって? そんなの君がほしいからだよ」

「あたしはあなたなんていらないよ…ッ…」

「だろうね だって、潤君のことが好きなんだろ」

「えっ!?」


 正直、驚いた。


 自覚してたつもりなのに言われるとドキッとする。



 やっぱり好きなんだ。



 潤君のこと……。