こいつ…
怒りを押さえて、俺も車から出た
「送るよ」
帰ろうと背中を向けていたロングヘアーは振り返った
べつに送りたいわけじゃないけど、さすがに雨の中1人で帰らせるのは男としてあり得ない
しかも春菜の一応、友達だし
春菜の大した友達でもなくて、あの事も知らないならもっと強気にできたろうに
自分がこんなに防衛的なのは、初めてかもしれない
「春菜のこと、好きなんでしょ?」
突然そう切り出されて俺は言葉に詰まった
黙る俺を見てロングヘアーはさらに言う
「それか、もてあそんでるわけ?」
「んなわけないだろ!」
今度は直ぐ様言葉が出た
雨が頭や肩に落ちるのがわかる
ロングヘアーの黒いコートにも雨が落ちて、滲んだ
薄暗い中でもロングヘアーがこっちを真っ直ぐ見据えてるのがわかる
「わかってる。だったら利益もないのにおばあちゃん家に連れてくわけないもんね。やっぱり好きなんだ」
カマ…、かけやがった
そして俺は見事にひっかかったわけだ

