カベの向こうの女の子



「じゃあ、なんで?」




俺が聞くと、ロングヘアーはわざとらしく言った



「あーあ、いつ気づいてくれるのかと思ったら、家の前まで来てやっと、なんてね」




わけのわからない俺は眉間にシワを寄せて黙った



ロングヘアーは鞄を持ち直しながら、笑った



「家入っていい?」



「はぁ?なに、急に」



本当になんなんだ



図々しいにも程がある




「春菜も上がったんでしょ?春菜に害がないか見ておきたいの」



ロングヘアーは悪気のない顔をして、平気でそんなことを言う




頭痛がまたひどくなってきた



めまいもしてくる




「害って…」





「ねぇ、いいでしょ。入れてくれないと、春菜にあなたのこと悪く言うから」



俺はあきれてため息が漏れた



「わかったよ。すぐ帰れよな」



俺は冷たくそう言って、アパートの階段を上った



ロングヘアーも着いてくる


まったく、本当、嫌な奴だな



俺はつくづくそう思って、またため息を吐いた