カベの向こうの女の子



「仕方ないじゃない。春菜に頼まれたんだもん。あなたに悪いからって」



俺は額に手を当てた


春菜…、余計なことを



優しさは嬉しいけど



でもよりによって、こいつかよ




春菜に会えると期待で忘れていた頭痛が、今さらながらよみがえってきた



「それなら、俺、帰るわ。気使わせて悪かったよ。春菜によろしく」



俺はそれだけ言って、彼女に背中を向けて歩き出した



ロングヘアーが春菜に俺のこと、良く伝えるはずはないとわかっていたけど、とりあえず帰るためのちょうどいい挨拶にはなった





最近、本当に日が伸びたなと思う



前は今頃の時間になったら、薄暗くなっていたのに、いつのまにか明るいままになっている



空は雲ひとつない、絵に書いたような晴天だ




朝や夜はまだまだ寒いけど、たまに昼間はぽかぽかと暖かい



春に近づいているんだ



季節のちょうど変わるときっていつなんだろう



特に冬から春なんかぼーっとしてる間に、いつの間にか変わっていく



桜が咲いてやっと実感するんだ



ああ、春なんだなぁって