カベの向こうの女の子



喧嘩になったのは、2年の夏だった



初めに呼び出されたのは、千秋だったんだ





千秋は呼び出された次の日、顔に見事に痣を作ってきた


口が切れて痛々しそうに顔を歪めてた



俺は痣のことを千秋に問いただして初めて、千秋が須釜に呼び出されたことを知った



亮太も同じだった



呼び出された理由は髪の毛だった


あの明るい髪の毛が気にくわなかったらしい




でも、髪の毛のことなんか、1年から千秋はああだった


いや、生まれた時からああなんだ


他でもなく地毛なんだから



何を今さらと俺は思った


それなら入学してすぐ呼び出すほうが自然だろうが



きっと呼び出した本当の理由は、俺にある



そうピンときた



俺と仲が良い千秋をボコすことで、俺が黙っちゃいないと思ってる



そのころ俺が千秋をかばって喧嘩することは多々あったから、そこに目をつけたわけだ




それなら初めから俺を呼び出せば良い



俺は、須釜のチャラチャラしたアホ面も嫌いだったが、そういういやらしい内面も嫌いだった



あいつのいやらしい腹黒さは、わりと有名だったりした