「えー風見もしかして愛狙い?」と恵がおどけると

「そうかな」
と風見がわたしを見つめて微笑む。

わたしはもう何が何だかわからなくて二人のやりとりを聞きつつ、ぽかーんとしていた。

「ま、まだだけどね」
とまた恵のケーキを一口食べ
「さ、俺は帰りまーす。お邪魔しました―」
と席をたって、わたしたちの伝票を持って行ってしまった。
それに何故気づいたかというとスマートに会計をこなそうとした風見が伝票を取ろうとして、床に落としたからだった。
その後、彼はあわてて会計をしてでていった。


「「あ」」
わたしと恵は風のように現れ風のように去っていった彼にあっけをとられ、いつの間にかさっきの重苦しいも空気も消え去っていた。

「変なやつ―」
と先に恵が笑い出すと、
「ほんとに―」
とわたしも笑う。

「ケーキとアイスティータダになったし、追加で頼む?」
と恵に聞かれて
「じゃぁ苺パフェ」
とわたしは答えた。

わたしの中に溜まっていた重苦しい何かは風見が連れ去ってくれたみたいだった。