結局そのあとは、お互い涙をこぼすばかりで何も語り合うことはできなかった。


いや、実際本当は何かを言葉にした記憶もかすかにあるけれど……。


リビングから出ようとした時、母が最後に作ってくれた甘ったるいココアがあまりに美味しすぎて、何も考えられなくなってしまった。


もう胸がいっぱいで、生まれて初めて母の本当の愛に触れた夜。


そんな穏やかな気持ちを身体中に感じながら2階の部屋に戻って見ると、何故か私が眠るはずの布団の中で優がぐっすりと眠っていた。


しかも、手にクレヨンを握ったまま……



「ふっ……」



思わず顔がにやけ、そのまま優の元へと歩み寄る。



「もう、可愛い寝顔……」



まるで天使みたい。


そう呟きながら優の頭を撫でる。



「ありがとうね、優」



ちゃんとお母さんとお話できたからね。



大好きだよ。



そう言ってもう一度頭を撫でようとした時、突然ポケットの中の携帯が震え、私はハッとそれを取りだした。