「よかった……」



私の言葉に母が安堵したように瞼を閉じる。


そして、もう一度私の手を取ると、瞳から涙をこぼしながら深々と頭を下げた。



「果歩、本当にごめんね。あなたには私のような人生は絶対味あわせたくないって思ってたはずなのに、結局こんな酷いことになってしまって……」



私の手をぎゅっと握る。



「私の不甲斐なさであなたをたくさん傷つけてしまってごめんなさい」


「お母さ……」



言葉より先に頬に涙が流れ落ちていた。


まさか、こんな風に気持ちを伝えてもらえるなんて思ってもなかったから、気持ちが一気に緩んでしまう。



「おか、さんも……辛かったの?」



苦しかった?


実際、私には指一本暴力を振るわなかった母。


手を挙げられそうになる度、母はいつもハッとしたように私から背を向けてばかりいた。


その後姿がとても辛そうで、あの頃はただ私に触れることさえ嫌なんだとそう勝手に絶望し、思いこんでいたけれど……


本当は自分の気持ちと必死で戦っていたのかもしれない。


孤独という、出口の見えない暗闇の中でずっと……