「最低な人だったわ」
次の瞬間たった一言母はそう言った。
「口では愛してるだの、幸せにするって偉そうなこと言っておいて、影では違う女をとっかえひっかえ、終いには他に子供まで作って、さっさとそっちの方へと行ってしまったわ」
それがまだ私が生まれて半年もしない頃。
母はそう言葉にし、辛そうに視線をそらした。
「そ、なんだ……」
なんだか胸がチクリとした。
何となくは予想していた事とはいえ、実際こんな風に聞かされるとやっぱりどことなく切なくなってしまう。
「今、何処で何してるか知らないの?」
「ええ、知らないわ。あれから何の音沙汰もないもの」
「そう……」
「ひょっとして……会いたいの?」
その言葉に私は慌てて首を横に振る。
確かに、どんな人だろうってずっと気になってはいたけれど、実際会いたいかと言われたら違う。
不思議と会いたいとかそう言う感情はこれっぽっちも湧いてこない。それが正直な気持ちだったから……



